赤澤大臣ご登壇「第4回Dream Platform朝食勉強会」開催レポート

2025年10月8日(水)にホテルオークラにて「第4回DreamPlatform朝食勉強会」を開催しました。
今回の講師は、「最低賃金改革」「DX・AI推進」「防災庁創設」など、日本の構造課題に真正面から取り組み、日米関税交渉にあたった赤澤亮正経済再生担当大臣(当時)です。
政局が大きく揺れるなかで行われた本講演は、「いま、日本が直面している本質的な問題」を立体的に可視化する貴重な機会となりました。以下、講演の要点をレポートします。

日本の最大の構造課題は「労働力の絶対量の減少」

冒頭、赤澤大臣はまず「これからの日本経済の制約条件」を明確に示しました。
今後20年間で、生産年齢人口は約2割、1,500万人以上減少する―。この数字は東京都の人口を上回る規模であり、経済・財政・社会保障すべてに影響を与える「確定的な未来」だと指摘しました。

「人手不足はまだ序の口です。これから皆さんの職場から、2割の人がいなくなる。いまの仕組みを前提にしては、企業も経済も持たない。」

この構造的課題に対し、大臣は三つの時間軸での対応策を提示しました。
①短期:高齢者・女性・障害者、特定技能を含む外国人の就業率向上
②中期:省力化投資とDX・AIの活用による業務効率化
③長期:出生率の改善による人口構造の回復

出生率向上は「20年後以降に成果が出る長期課題」であるため、短期的な就業率向上と中期的な生産性改革を同時に走らせる必要があると強調しました。

「DXはマイナンバーカードの利活用を指す言葉ではありません。
それは、労働力減少という“構造的制約”を克服するための設計思想そのものです。」

また、DX導入は「人を減らす」議論ではなく、「人の価値を高める仕組み」であると説明。例えば、水産加工のホタテむき作業では10人の工程が3人で可能となり、残りの7人分の人件費を賃金アップ・再投資・技能転換に充てることで、地域と産業の持続可能性を高められると語りました。

「暮らしていける賃金」へ―最低賃金改革の狙い

次に、講演の中心テーマである最低賃金改革に話が移りました。
赤澤大臣は冒頭で次のように断言しました。

「最低賃金で働く人が全国に660万人。フルタイムでも暮らしていけない―これは政治の責任です。」

EU諸国では、加盟27カ国の合意形成のために、厳格なデータと共通基準を採用しており、「最低賃金は、総賃金中央値の60%または平均の50%を下回ってはならない」と定めています。この基準を日本に当てはめると、全国平均で時給1,200円が「暮らしていける最低ライン」となると説明しました。
一方で、日本の最低賃金法には「経営者の通常の支払い能力を勘案する」との条文があり、引き上げの抑制要因となってきた点を指摘。赤澤大臣は、「世界でこのような条文を持つ国は日本だけ」だと述べ、基準の再設計の必要性を強調しました。

「最低賃金は“払える額”ではなく、“暮らしていける額”で決めるべきです。企業の支払い能力を前提にしている限り、賃金は永遠に上がりません。」

石破政権では経済団体との調整を経たうえで、全国平均の引上げ目安を5.7%から6.0%に引き上げ。 地方自治体でも中央目安を上回る改定(平均+0.3%)が相次ぎ、 東京・神奈川では1,200円超えを達成しました。 これにより125万人が「暮らしていける賃金」水準に到達した一方で、なお全国では約500万人が生活困難な層にとどまっている現状を明らかにしました。また、地方経済が「最賃引き上げで崩壊する」という見方に対し、赤澤大臣は次のように反論しました。

「地方経済は最賃が低すぎるからこそ崩壊している。上げなければ人が流出し、インフラも維持できない。最賃引き上げは地方を守る政策です。」

その上で、中小企業に対しては、DX・省力化投資などを支援する1兆円超の政策パッケージを準備。さらに、都道府県が国の目安を上回って賃上げした分については、重点支援交付金で超過分を補填する仕組みを導入。補填率は初年度100%、翌年から段階的に8割、6割、4割、2割と縮小していく仕組みを説明しました。

「防災庁」創設と“事前防災”の国家機能化

次に赤澤大臣は、自身のライフワークでもある「防災行政の抜本改革」について語りました。1985年の御巣鷹山事故を契機に防災政策の道に進んだ原点を振り返りつつ、「防災庁創設」は10年以上にわたり要望されながら実現してこなかった国家的課題だと指摘しました。

「いまの防災体制は、内閣府の防災担当職員110人、予算73億円規模。これでは関東大震災の時代と何も変わっていません。」

被災後の対応ではなく、「事前防災」への転換が不可欠と述べ、南海トラフ地震が30年以内に70〜90%の確率で発生し、死者30万人・避難者500万人というシナリオが現実的であることを提示。「訓練された避難所運営人材は全国に存在せず、平時の備えが命を救う」と訴えました。さらに、2024年度から本格稼働した防災デジタルプラットフォームの意義を説明。全国の自治体・指定公共機関・インフラ企業が災害情報をリアルタイムで共有し、AIが優先順位を自動判定する仕組みを整備したと述べました。
「防災庁は“平時の無駄”ではありません。命を守るのは災害発生後の対応ではなく、平時の備えそのものです。」

対米関税交渉―「勝てる席」に座るために

講演の終盤では、赤澤大臣が担当した日米関税交渉の舞台裏にも触れました。
世界200カ国のうち、日本は「関税を一切引き下げずに合意した唯一の国」だと述べ、
アメリカ側からも「特別なパートナー」として認定されたと語りました。
4週連続ワシントンDCに訪問したというのは外務省でも例をみないと言われ、10回以上の訪米交渉を重ねた結果、関税の引下げを回避しつつ、米国の80兆円規模の投資支援枠を日本企業が活用できる環境を確保。半導体・医薬品・エネルギーなどの重要分野で、EU並みの特例措置を勝ち取ったと説明しました。

「政治家は恥を知るべき」―信念を貫く改革へ

講演の最後に、赤澤大臣は政治家としての覚悟を語りました。

「政治家は恥を知るべきです。660万人が暮らしていけない国を放置してきたことは国辱です。今こそピンチをチャンスに変え、国の形を立て直すときです。」

今回の講演は、単なる政策説明にとどまらず、政治家としての信念と実行力を感じさせる内容でした。労働力減少、最低賃金、防災、国際交渉―いずれのテーマにも共通するのは、
「変化を恐れず、構造から日本を再設計する」という姿勢です。
「ピンチをチャンスに変える」―その言葉は、危機の只中にある日本へのエールであり、未来への設計図でもありました。
本質を見据え、実行に移す政治。その原点を思い起こさせる時間となりました。